日高敏隆先生がたずさわられた本 4
「ファーブル植物記」 日高敏隆/林瑞枝 訳、1984年
(平凡社、1984.11.16 発行、385p)
カバー |
表紙 |
J-H・ファーブル著(J.-H. Fabre) “HISTOIRE DE LA BUCHE(薪の話) RECITS SUR LA VIE DES PLANTES”1867 |
「ファーブル植物記」への招待 というテレビ番組(1994年7月25〜29日 20:00~20:57、NHK衛星第2)が、この本が出版されて十年後の夏休みに放送されました。翻訳者の一人である日高先生は動物学者でもありその番組にはかかわられていないようですが、この本のすばらしさや植物のおもしろさをうまく伝えていたように思います。番組に挿まれたファーブルを紹介する南フランスの映像からは、私が若い頃南フランスで過ごした夏の1カ月半がなつかしく思い出されもしました。
ラサール石井さんがファーブル先生に扮し、吉本多香美さんがファーブル先生の助手をして、子どもたちを相手に植物のダイナミックさを豊富な映像と共に紹介するというすてきな企画でとってもおもしろくて、この番組を見てからは植物が動く生き物だと感じられ、植物を見る目が変わったように思います。
その番組を録画したビデオテープが最近出てきました。「ファーブル植物記」には『時代のせいもあって、ときには奇妙なことも書いてある』と日高先生が「解説めいたあとがき」に書かれていますが、番組では堀田満先生が取材協力されていて、奇妙なことは出てきません。そして以下のように毎日1つの物語を話すという構成になっていました。
第1話 バラの芽の物語
第2話 節約家の麦の物語
第3話 イチゴの引越し物語
第4話 おじぎ草物語
第5話 母の緑の物語
『...けっして新しいとはいえないこの『薪(たきぎ)の話』を今ごろ翻訳・出版することにしたのは、読者がこの本から植物についての知識を得てほしいと思ったからではまったくなく、植物たちが一生懸命生きている姿を大木のてっぺんにある一つ一つの芽が何とかして地面にとどこうとしている努力の姿としてとらえるような、生き生きとした、ダイナミックな見方を読者が抱いてくれる一助になればと願ったにほかならないからである。...』(日高敏隆「解説めいたあとがき」より引用)
ファーブルが書いた植物の本は他にもいくつかあったようですが(河野智謙・蔭西知子「著作中で共有した図版から読み解く、博物学者 Jean-Henri Fabreと植物学者Adrian-Henri De Jussieu との接点についての考察」2009)、ファーブルが植物をどのように見ていたかを、日本の私たちにはじめて紹介した興味深い本でした。
ファーブルの本文は『きみたちがよい子なら、花はつぎの物語のテーマにしよう。』で終っていますが、それについて日高先生は、『...花はたしかに美しいが、植物が美しいのは花だけではない...』と書かれています。
その後に出された「植物のはなし」ファーブル博物記5、後平澪子/日高敏隆 訳、2004年(岩波書店、2004.6.25 発行、320p、原著:La Plante. Leçons à mon fils sur la botanique, 1876)には、花の話も書かれているようです。
(2014.12.12. Yo )
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