-2017年7月25日-
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トゥリアサウルス Turiasaurus riodevensis Royo-Torres, Cobos & Alcala, 2006 の復元骨格
「メガ恐竜展2017」(7/25〜9/3)の主役のトゥリアサウルス Turiasaurus riodevensis の発見談を、スペインから来られた、"ディノポリス"のルイス・アルカラ館長のトークショー(大阪自然史博物館の田中嘉寛 学芸員の通訳/解説)で聞くことができました。
スペインのマドリードとバルセロナの間に位置するテルエル(Teruel)には、いくつも恐竜の見つかる場所があるそうです。2億3000万年前の三畳紀から、ジュラ紀、約6600万年前の白亜紀の終わりまでの恐竜のいた時代を全て含む地層がテルエルにはあり、深い谷で異なる時代のたくさんの地層が見られ、それらは大陸の環境を示す地層で陸上の生き物の化石、プテラノドンや爬虫類なども見られるそうです。
そこで、2001年に自治体、研究者などが古生物博物館 "ディノポリス"を作り、その二年後の2003年5月に、テルエル県南部のリオデバ(Riodeva)で、ジュラ紀後期の1億4500万年前の地層から、「すごい!」とみんなが大きな声をあげるほど、とても大きな恐竜の爪の化石が見つかったそうです。その後、追加の化石が見つかり、骨を並べて骨格の地図を作ると、大きさがあっていて、重なる部位はなくて同じ1匹の恐竜のものとわかったそうです。
骨を切って顕微鏡で年輪を調べると、大人になって成長が止まって年輪が増えるのが止まっていることがわかりましたが、その後何年生きたかはわからないということです。骨には肉食恐竜に噛まれた跡が残っていて、その体の大きさから倒せるものはいなくて、寿命が尽きて自然死した後に齧られたと考えられているそうです。
トゥリアサウルスの上腕骨 |
Turiaはテルエルの古い地名で、Turiasaurusはテルエルのトカゲという意味だそうです。トゥリアサウルスは世界で最も大きな恐竜の1つであり、ヨーロッパでは最大で、「ヨーロッパの巨人」と言われていて、全長30mを超え推定体重は約44tで、前肢の上腕骨(左の写真)だけで長さが1m80cmあり後肢の大腿骨は2m10cmに達するそうです。 形態的な数多くの特徴から新種と判断されたそうですが、上腕骨の形態には、突起が張り出していることや軸の部分が前後に薄いという特徴があるそうです。 同じ地層からはステゴサウルスやオルニトミムスの仲間の化石が出ているそうです。 |
2006年12月に雑誌"Science"で正式に記載発表されたこのトゥリアサウルス Turiasaurus riodevensis が大切なわけは、ヨーロッパ最大であることだけではなくて、ディプロドクスやアパトサウルス、ブロントサウルスなどの仲間たち(新竜脚類)とは異なるグループ、新しく"トゥリアサウルス類 Turiasauria"と命名されたグループが示されたことにあり、その原始的な竜脚類のグループで唯一巨大化したのがこの種ということです。 (Royo-Torres, R., Cobos, A., and Alcalá, L. (2006). "A Giant European Dinosaur and a New Sauropod Clade." Science 314: 1925-1927.)
それまでにも、ヨーロッパ各地で断片的化石が見つかっていて、ポルトガルやイギリスやフランスで見つかったものが、Turiasaurusとわかったそうです。さらに、タンザニアやアメリカからも....。そして、この恐竜がいた約1億5000万年前には1つの大陸としてまとまっていたので、アジアにもいた可能性があるそうです。
トゥリアサウルスの脳函(braincase)の実物化石 |
トゥリアサウルスの歯の実物化石 |
会場には、日本初公開のトゥリアサウルスの脳函と歯の実物化石も展示されていました。トゥリアサウルスの歯は、尖った非対称な頂点をもち、ハート形の歯冠という独特の特徴をもっているそうです。
トゥリアサウルスの前半身復元骨格(ヒトが小さく見えます。)
前足の爪が素敵です。
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