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 ラス・オヤス Las Hoyas
 (白亜紀前期の湿地帯)の
 コンカベナトールと他の生き物たち
              -2015年3月20日-  

→ロ・ウエコのティタノサウルス類 

 大阪市立自然史博物館特別展「スペイン 奇跡の恐竜展」(3/21〜5/31) のブロガー招待に応募して内覧会を取材しました。恐竜展を見るのは十数年ぶりで、スペインの恐竜というのも珍しく、予告の風景画に恐竜コンカベナトールとともに鳥が描かれているのも新鮮で、見てみたいと思いました。
 スペイン中部のカスティーリャ=ラ・マンチャ州にある2大恐竜化石発掘地:ラス・オヤス(白亜紀前期)とロ・ウエコ白亜紀後期)から様々な保存状態のよい化石が来ていました。
白亜紀というと、恐竜が最も栄えていた時代で、映画「ジュラシックパーク」(1993)のタイトルになっているジュラ紀に続く時代です。そして白亜紀末には隕石が衝突して恐竜が滅んだと考えられています。


 ラス・オヤスの化石発掘地は、白亜紀前期(1億2500万年前)の地層からなり、湿地帯の湖で堆積した薄い層状の石灰岩でできているそうで、化石はどれも板状で、細部(骨以外の部分、皮膚や指先の肉球など軟組織の痕跡など)もきれいでした。
 恐竜以外のいろんな動物(シーラカンスもいました!)や植物の化石も種類が豊富で、Oscar Sanisidroさんの美しいイラストや各所に置かれた動画の助けもあって、その頃の豊かな生き物たちの様子が浮かびあがってきました。当時ラス・オヤスは現在の赤道近くに位置していて、雨期には40℃、乾期には20℃というきびしい気候だったそうです。


シーラカンス類の一種の実物化石(全長約20cm)

木生シダのウェイクセリアWeichselia reticulataの実物化石(長さ約1m)

 主役のコンカベナトール Concavenator corcovatus Ortega, Escaso & Sanz, 2010 は、2010年に報告されたばかりで、"クエンカのこぶのある狩人"という意味だそうです。林学芸員さんによると、下の写真の実物化石のお腹の部分には食べられた別の肉食恐竜の骨がはいっていたそうです。「この素晴らしい恐竜についてはまだわかっていないことばかりです。ラス・オヤスの生態系では、間違いなく恐ろしい肉食恐竜で、マンテリサウルスやペレカニミムス(下記参照)など他の恐竜を襲っていたことでしょう。」と図録には書かれています。


コンカベナトール 後肢の肉球と爪の痕跡

尻尾の先の方の尾椎(白っぽい所は皮膚の痕跡?)

同時期にいた近縁の日本のフクイラプトル(左)とコンカベナトールの復元模型(右)


 ラス・オヤスで発見された風切羽の化石(長さ5cm:右の写真)が展示されていましたが、骨化石と一緒ではなかったので、どの恐竜(あるいは鳥類)の羽毛かはわかっていないそうです。
 会場には、鳥への進化が理解しやすいように参考になるいろんな羽毛恐竜の予想復元模型がたくさん展示されていて楽しめました。

 ラス・オヤスにいた獣脚類のペレカニミムス Pelecanimimus polyodonも、実物化石とともに従来の毛のない復元模型と現在の羽毛のある復元模型が同時に展示されていました。


ペレカニミムス 従来の復元

ペレカニミムス 現在の復元

 1860年にドイツのジュラ紀後期の地層から始祖鳥の化石が発見されてから、百年以上して、1996年に中国の白亜紀前期の地層から羽毛をもった恐竜シノサウロプテリクスの化石が発見され、その後羽毛恐竜化石がぞくぞくと発見されて、鳥は恐竜から進化したということが明らかになってきたそうです。
 ラス・オヤスから発見された鳥類は、エナンティオルニス類という鳥類のグループに属し、白亜紀に栄え、白亜紀末に恐竜とともに絶滅したそうです。展を見る前からコンカベナトールと一緒に描かれていて気になっていた鳥は、そのグループのイベロメソルニス Iberomesornis romeraliで、1980年代中頃にスズメくらいの大きさの化石が見つかっていました。イベロメソルニスは、ヴェロキラプトルのような非鳥類型恐竜類に近い骨(腰帯や後肢)も残っていて、恐竜類と鳥類を結ぶ確固たる証拠になるそうです。
 その後1990年代には、2属の鳥類コンコルニスとエオアルラヴィスが発表され、他にもまだまだ出て来そうです。ラス・オヤスの白亜紀前期の空にはたくさんの鳥類と翼竜エウロペヤラ Europejara olcadesorum(翼開長:2m)が飛び交っていたそうです。


左からエオアルラヴィス、イベロメソルニス、コンコルニス の実物化石


翼竜エウロペヤラ

 2億5千万年前の激しい環境変化によって酸素濃度が急低下してそれまでの生物の大量絶滅が起こった後に、気嚢により効率のいい呼吸ができた恐竜が生き残って栄えた?ようですが、この気嚢やいいところを鳥類が受け継いで、空を飛ぶという激しい動きも可能になったようです。
 もう一つの化石発掘地、ロ・ウエコの地層の白亜紀後期(約7000万年前)の後、約6500万年前に隕石の衝突により恐竜たちの大量絶滅が起り、それを生き延びた生き物たちから今の鳥たちや私達が進化したと思うと不思議な感じがします。

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