ニシキウズガイ科の巻貝の放精・放卵 →巻貝の写真を見る
ー2012年6月7日ー
2012.6.10
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左が放卵した♀、右が放精した♂
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沖縄で採取されたニシキウズガイ科の巻貝2匹を2012年4月13日より水槽で飼育、6月7日の朝に水槽を見ていたら、1匹が突然に放精し始めました。パフパフとかなりの量で、水が白くなるのではと思われました。(ポンプを一時止めて、青い紙をバックに写真を撮りました。)
8:26 放精中:貝の左側の白いもやもや
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8:37 放精中:下に落ちていっている
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放精は30分以上続き、貝が水面から上に出て終わったかと思うと、水槽の前水面に粘液に包まれた卵の帯のようなものが漂っていました。水槽の前面で水面より出ていたもう1匹の貝を見ると、水の中に入っていて産卵を始めていました。放卵もその後30分以上続きました。(後で撮影していた写真を見ると、放卵した貝は水面より出ていたときにすでに卵を出し始めていたことがわかりました。)
9:25 放卵中:右体側から出ている
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9:31 放卵中
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時刻 | ♂ (貝殻の長径 22mm) | ♀ (貝殻の長径 22mm) |
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水面から少し体が出ていて放精した | 水から出て、水槽の上端にいる | |
どんどん放精し続ける | 水から出ている | |
どんどん放精し続ける | 水から出ているが、卵がもれている | |
やや放精少なくなる | 水から出ている | |
水から出て、放精終わる | 水から出ている | |
水から出ている | 水から出ている | |
水から出ている | 粘液に包まれた卵の帯が漂う | |
水から出ている | 水に浸かって放卵している | |
水から出ている | どんどん放卵し続ける. | |
水から出ている | 口を動かし小さなふんをした | |
水から出ている | 放卵終わる | |
水から出てじっとしている | 同じ場所でじっとしている | |
水から出てじっとしている | いつものように藻類を食んでいる。 |
室温 24.5度、水温 23.0度
なぜ今、放卵や放精をしたのかと思い、潮汐を気象庁のHPで調べると、貝が元いた沖縄もここから近い大阪の海も満月から3日目の大潮で、満潮時刻が8時すぎ、潮位も高いようでした。潮の満ち引きのない水槽の中でも、体内のリズム?を維持しているように思いました。
ニシキウズガイ科の巻貝のサラサバテイやギンタカハマは、大規模な一斉放卵放精をするようです。
阿嘉島の四季(下池和幸:阿嘉島臨海研究所の機関誌 みどりいし, (2) : 24-26, (1991) によると、
「水温が 25°Cを越える 5~6 月頃になると多くの生物達の繁殖行動はピークに達する。満月の頃に同調して、日没後ミドリイシサンゴが一斉産卵するのを始め、クロテナマコ・ガンガゼ・アオヒトデなどの棘皮動物、ゴカイ類、ギンタカハマガイ、アイゴ類などでも月齢に同調して一斉に放卵放精もくはそれに関わる生殖行動をする。」
七夕の夜は産卵祭り(高知県幡多郡大月町 黒潮生物研究所のブログ2008-07-07)によると、
「夜10時頃、無数のナガウニ類が岩やサンゴの上に乗り、放卵放精を始めました。ナガウニは殻径2~3cmの小さなウニですが、何千何万というウニが一斉に卵や精子を放出するため、海中はみるみる透明度が下がり、2~3m先までしか見えないほどに白濁しました。よく見ると産卵しているのはナガウニ類ばかりではなく、いたるところで色々な生き物が産卵していました。種類が確認できたのは、ツマジロナガウニ、ホンナガウニ、シラヒゲウニ(以上ウニ類)、トラフナマコ、オニイボナマコ(以上ナマコ類)、ギンタカハマ(巻貝類)、アコヤガイ(二枚貝類)でした。」
夜のサンゴ礁は、産卵ラッシュ!(鹿児島県・奄美市大浜海浜公園奄美海洋展示館 1999、7月NEWS)によると、
「7月1日21:00~24:00に大浜海岸サンゴ礁で夜間潜水を行いました。
満潮は、21:11でしたが、すでにサンゴは、産卵を始めており、22:00過ぎには、ツマジロナガウニ、オオアカヘビヒトデ、コシダカギンタカハマガイが、一斉に産卵(放卵・放精)をはじめ、辺り一面、白く濁りました。」
放精<サラサバテイラ>(興克樹:奄美大島撮影日記 2004年7月9日、10日)によると、
「昨夜は、サラサバテイラ(高瀬貝)の放卵放精がありました。多くの高瀬貝が、岩の上に立ち上がり、一斉に放精を行ないました。辺り一面、白濁してしまいました。」
また、昨年同じ貝(たぶん)を飼った時はこれよりもどんどん大きくなりましたが、長径が22mmしかない小さな貝でも放卵や放精をしたのは不思議でした。大きくなるまで育てたいのですが、食欲が旺盛で水槽に光を当てていても餌となる藻類の繁殖が間に合いそうにありません。
沖縄県本部町にある沖縄県栽培漁業センターでは昭和63年からサラサバテイの種苗生産がされており、サラサバテイ(タカセガイ)の種苗量産(村越正慶・山本隆司(沖縄県栽培漁業センター)・新垣盛敬:平成4年度日本水産学会講演要旨集1992 P205)によると、長径7cm以上の貝を使用して、止水+U.V.法で、産卵誘発をしているそうで、殻径15mmは稚貝とされています。「産卵誘発反応は、常に雄の方が早く反応した。」とも書かれていますが、水槽の結果も雄が先に放精して約30分後に雌が放卵し、同じでした。
家の水槽の生き物が、はるか南の島の海の生き物とつながっていると感じました。
(2012.6.12. Yo )
この巻貝はやはり餌不足のためか死んだので(7月30日に雄、8月1日に雌)、貝殻を大阪市立自然史博物館の標本同定会で石田惣学芸員と竹之内孝一さんに同定していただき、
ニシキウズ(アナアキウズ型) Trochus maculatus form verrucosus Gmelin, 1791 とわかりました。
2匹とも殻高は約20mmでしたが、「日本近海産貝類図鑑(2001)」によるとアナアキウズ型は殻高40mmになるようです。成長は早そうで、この雌は6月14日から8月1日の一ヶ月半で6分の1巻きほど、貝殻が大きくなっていました。
6月14日の貝殻♀の大きさ
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8月1日の貝殻♀の大きさ
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(2012.9.5. Yo 追記 )
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